ひとりぼっちの上司と私

 ――デート。

 低い声で告げられた決定的なひと言に、心臓が口から飛び出しそうになった。

 ジッとしていられなくてなぜか立ち上がった私は、ベッドの上に置いてあったクッションを手に取り、思わずギュッと胸に抱く。

 どうしよう……。うれしすぎてどうにかなっちゃう……!

『……おーい。嫌すぎて声も出ないのか?』

 デスクに置き去りにしていたスマホから、やや不安そうな須田さんの声が聞こえてくる。

 いけない、喜びをすぐに処理しきれないからって、肝心の返事を忘れていた。クッションを胸に抱いたままデスクのスマホを手に取った私は、スピーカーを解除して、通常の通話に戻す。

 今交わしている大切な会話を、少しも聞き漏らしたくなかった。

「と、とんでもございません……! ぜひ、ご一緒したく存じます!」

 耳元で、かすかに笑ったような彼の吐息が聞こえた。

『ずいぶん硬いな。その喋り方、初期のヤスダみたいだ』
「そ、そうですね。言われてみれば……」
『あの頃に比べたら、加納との距離もずいぶん近くなったけど……今は、これでもまだ足りないと思ってる。お前をもっと知りたいし、俺のことも知ってほしい。日曜は、そのためのいい機会になれば思ってるから、よろしくな』

< 131 / 205 >

この作品をシェア

pagetop