ひとりぼっちの上司と私
――デート。
低い声で告げられた決定的なひと言に、心臓が口から飛び出しそうになった。
ジッとしていられなくてなぜか立ち上がった私は、ベッドの上に置いてあったクッションを手に取り、思わずギュッと胸に抱く。
どうしよう……。うれしすぎてどうにかなっちゃう……!
『……おーい。嫌すぎて声も出ないのか?』
デスクに置き去りにしていたスマホから、やや不安そうな須田さんの声が聞こえてくる。
いけない、喜びをすぐに処理しきれないからって、肝心の返事を忘れていた。クッションを胸に抱いたままデスクのスマホを手に取った私は、スピーカーを解除して、通常の通話に戻す。
今交わしている大切な会話を、少しも聞き漏らしたくなかった。
「と、とんでもございません……! ぜひ、ご一緒したく存じます!」
耳元で、かすかに笑ったような彼の吐息が聞こえた。
『ずいぶん硬いな。その喋り方、初期のヤスダみたいだ』
「そ、そうですね。言われてみれば……」
『あの頃に比べたら、加納との距離もずいぶん近くなったけど……今は、これでもまだ足りないと思ってる。お前をもっと知りたいし、俺のことも知ってほしい。日曜は、そのためのいい機会になれば思ってるから、よろしくな』