ひとりぼっちの上司と私
「……わかったよ。戻ればいいんだろ、戻れば。加納さん、詳しい話はまた今度」
「ご自分の立場を理解してくださってなによりです」
すっかり意気消沈した様子の社長は、新しい企画への熱意も一旦落ち着いたらしい。少し気の毒ではあるけれど、最悪のパターンは避けられてホッとする。
「それと、加納」
気を抜いていたタイミングで須田さんに名前を呼ばれ、思わずぎくりとする。
「は、はいっ」
「社長相手だと多少気を遣うのはわかるが、ダラダラとあの人の相手をしていたらいつまでも帰れない。できないことはできない、帰りたいなら帰りたいとハッキリ意思表示をしろ。でないと自分が潰れるぞ」
真顔のままそう言った須田さんは、私の返事を待たずにオフィスを後にする。
助けてもらったことより、社長をうまくあしらえない要領の悪さを指摘された言葉の方が胸に残り、思わず肩を落とした。
今すぐやるべき仕事があるわけじゃないし、もう帰ろう。
帰って、ゲームの世界に逃げよう……。
後ろ向きな思考を巡らせつつ会社を出て、駅で電車に乗り込む。
運良く座席に座れたため、スマホを持って、とりあえず目的のゲームアプリ『夕波メロウ』にログインした。