ひとりぼっちの上司と私

「だから、事務作業は一時間しかもたないと、僕は常々言っているだろう? 残した分は明日やる」
「そう言ってタスクを溜めているから一向に処理が進まないんですよ。しかも、逃亡先で関係のない社員まで巻き込んで……」
「巻き込んだわけじゃない。僕は正当な企画担当者として、加納さんを指名したんだ」
「それこそ明日で構わない案件でしょう。社長室ではあなたの決済が必要な書類が列をなして待っているんですよ?」
「今日は評価シートの最終確認を社員全員分済ませたじゃないか。それだって大嫌いな仕事なのに、隅から隅まできちんと読んで、給与の承認までした。百二十点だ」

 社長の言い分はなんだか、大量の宿題から逃げたくて駄々をこねる小学生のようである。

 一方須田さんは、闇金の取り立て役から、手のかかる児童をたしなめる鬼教師へと変貌を遂げている。

「あなたは〝大嫌いな仕事〟が多すぎます。同じ理由で税理士や弁護士とのやり取りはほとんど俺に丸投げしているんですから、いくら地味でも細かくても、最低限のことはしてください」

 須田さんに淡々と詰められた社長は、ようやく観念したらしい。はぁっと深いため息を吐くと、軽く音を立てて椅子から立ち上がる。

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