ひとりぼっちの上司と私

「――好きだ」

 胸の中で大切に温めていた想いを、ようやく彼女の前で口にする。加納は長い睫毛を震わせ、感極まったように瞳を潤ませた。

「私も……私も、須田さんが好きです」

 確かめるようにゆっくりと口にし、ふわりと優しく微笑む。

 彼女の気持ちを察していなかったわけではない。お互いに、上司と部下以上の心の繋がりを感じることは何度もあったと思う。

 ただ、自分に自信のなかった俺が、素直になるのを躊躇っていただけ。

 待たせてしまった分、これからはまっすぐに自分の気持ちを伝えていくつもりだ。

 俺は彼女の手をそっと離すと、背中に腕を回して彼女をギュッと抱きしめる。加納も自然と俺にしがみつき、お互いのぬくもりを分け合う。

 彼女の髪からふわりと香る甘い匂いに、心が満たされていく。

「……もう、離さない」
「はい。……ずっと一緒です」

 俺の胸の中で顔を上げた彼女が、そう言って微笑む。言葉では伝えきれないほどの愛しさがこみ上げた俺は、顔を傾け、彼女に唇を近づけた。

 触れる寸前で彼女の瞳を覗き、最後の同意を得るように視線を交わす。

 微かに彼女が頷いたのをきっかけに、俺たちは冷えた唇をそっと重ね合わせた。


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