ひとりぼっちの上司と私

「……わ、悪い。激しく誤解させたと思うが、文字通りの意味で言ったまでだ」
「わ、わかってます。須田さんが軽々しく女性を家に誘うタイプじゃないのは。いつも一緒にゲームをしている時みたいに、寛いだ時間を過ごそうとしてくれただけですよね? こっちこそ、変な風に意識しちゃってすみません」
「……いや、意識はしてくれ」

 ぽつりと本音を漏らすと、加納はぽかんとして俺を見つめる。

 あまり見られるとこちらも照れてしまうが、俺は観念して彼女に苦笑いを返した。

「やっぱり、うちへ連れ帰ってもいいか?」
「えっ……?」

 足を止めた俺は体の向きを変え、彼女の正面に立つ。彼女の小さな両手を取って、冷えた指先を包み込むように握りしめた。

 通りに人の往来はなく、車道を走る車も少ない。俺たちを見ているのは、等間隔に並んだ街灯の淡い光だけだ。

「文字通りの意味ではあるが、俺はなんとも思っていない人間を家に上げたりしない。自分の内側に踏み込まれてもいいと思った相手は、お前が初めてなんだ」
「須田、さん……」

 会社でひとり孤立し、都会の環境に怯えていた頃の彼女はもういない。

 加納は自分の力でその逆境を乗り越え、最近では上司であるはずの俺を明るく励まし続け、壁を乗り越えるのを手伝ってくれた。

 そのひたむきに努力できるところも、他人に優しく寄り添えるところも、誰より楽しそうに仕事をするところも……彼女の全部が、俺の胸を惹きつけて離さない。

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