ひとりぼっちの上司と私
もちろん、彼は約束通り一線を超えるような行動に出ることはなく、動物でも甘やかすみたいに私を撫でたり、ほんの少し手をくすぐったり……後は寝る前に一度、優しいキスをくれた。
寝る直前まで私たちはこの部屋でゆうメロをしていて、私があからさまに眠気を催していたので、早々と切り上げることになった。
その時、彼はソファで寝ると言って私にベッドを貸してくれたのだ。
彼の方が体は大きいのだからベッドは譲ると言ってみたものの、頑として聞き入れてくれなかった。
彼の性格を考えたら、女性をソファに寝かせるのが許せないというのもわかる。……須田さん、優しいから。
とまぁ、そんな流れで私がベッドを借りることになり、彼がリビングに移動する直前――。
『おやすみ、莉々』
初めての名前呼びと共に、少し長めのキスが押し当てられ、そのまま彼は寝室を出て行った。
あぁ……。思い出しただけでにやけてしまう。
悶えるほどのときめきを抱え、ゴロゴロとベッドの中で寝返りを打っていたその時。
部屋のドアがコンコンとノックされ、向こう側から彼の声がした。
「莉々、起きてるか?」
「は、はいっ……!」
布団を剥いで、ガバッと飛び起きる。床のスリッパに足を入れ、髪を手櫛で整えてから遠慮がちにドアを開けた。