ひとりぼっちの上司と私
そう思いながら、辺りを見回していた時だった。
えっ。あれは……須田さん!?
先ほど会社の前で別れたばかりの上司が、ハム公の真ん前に立っていた。誰かと待ち合わせなのか、時折首を伸ばして周囲を確認したり、腕時計を眺めたりしている。
これ以上近づいたら、鉢合わせしてしまうのは確実。私は慌ててスマホを操作し、ヤスダさんに連絡を取る。
【すみません、近くまで来ているのですが待ち合わせ場所に偶然知り合いがいて……場所を変えてもらえますか?】
送信と同時に既読を表すチェックマークがつき、すぐに返信が届く。
【わかりました。それでは、店に直接集合しましょうか】
【了解です】
ハム公の前を離れ、飲食店の並ぶ細い路地へと入っていく。目的の店はすぐに見つかった。
目的はお寿司とはいえ、あまり高級な店では緊張すると思い、居酒屋的なメニューも豊富にそろった創作寿司の店を選んだ。
ヤスダさんの好きなマグロのお寿司がちゃんとメニューにあることも確認済みだ。
……ほとんど同じ場所から出発したと思うけど、まだ連絡はないし到着は私の方が先かな?
とりあえず中で待たせてもらおうと、店の暖簾をくぐろうとしたその時だ。
「加納?」
よく知る人の声に不意に名前を呼ばれ、ぎくりとした。