この度、俺様パイロットとご成婚しました。
◇
「もうこんな時間っ!」
デスクの上に置いた時計で時間を確認した鈴菜は、慌てて資料を片付け始めた。
六時を過ぎると仕事終わりの会員たちが、カウンセリングを受けるために続々と事務所までやって来る。
デートや顔合わせが活発に行われるのは、一般的な会社員の休日と同じ土日祝日だ。
そのため、アドバイザーとのカウンセリングは平日の夜に設けられることが多い。
鈴菜はパソコン片手に事務所内にあるカウンセリングルームのひとつへ向かった。
ちなみに、カウンセリングルームにはプライバシーに配慮した防音設備が備わっている。
「こんにちは、若槻さん」
「こんにちは!速水さん。今日も一段と綺麗だね」
カウンセリングルームに入るやいなや間髪入れずに褒めの言葉が飛んできて、鈴菜は軽く苦笑いした。
「ありがとうございます」
社交辞令をさらりと受け流したあとはソファに座り、すぐさまパソコンを開く。
若槻は鈴菜が担当する男性会員のひとりである。
四か月前にビリーブマリッジに入会し、カウンセリングは今日で三回目だ。
「先週のデートの様子を伺ってもよろしいですか?」
「ああ、あれね。相手には仮交際終了って伝えといて」
仮交際終了を告げると若槻は顔色ひとつ変えず、ケロリとした態度でソファにもたれかかった。