この度、俺様パイロットとご成婚しました。
カチャンと玄関扉が開く音がすると、鈴菜はソファから立ち上がり航輝を出迎えに廊下を走った。
「おかえりなさい。話し合いはどうでした?」
「あまり変わらない。俺は鈴菜に騙されているんだって言い張っている」
航輝はジャケットを脱ぎながら難しい顔で答えた。
睦美の怒りは理解できる。素性を隠して結婚してしまったせいで、すっかり疑心暗鬼に陥っているのだ。
状況は最悪だった。
(最初から無理があったのかもしれない)
恋愛はふたりでできても、結婚となると話が変わる。
家同士の繋がりを重視したのは、もう何十年も前の話だが、彼のような名家の出には無関係とは言えない。
「なにか美味いものでも食べに行こうか?ほら、裏路地のレストランのオニオングラタンスープ、好きだろう?」
航輝は暗い顔をする鈴菜を気遣うように、あえて明るく誘いをかけた。
彼も鈴菜と睦美と板挟みになっていて、大変なのにそんな素振りを一切見せない。
自分の存在が彼を困らせていることが、余計につらい。