この度、俺様パイロットとご成婚しました。
(まあ、そうよね)
当然といえば当然の反応だろう。
これまで結婚どころか恋人すらいなかったのに、仮交際どころか真剣交際もすっ飛ばして成婚に至っているわけである。
真由子にしてみれば寝耳に水の話だ。
会員には焦らず順序よく次のステップに進めと教え諭しているのに、肝心の自分がこの有様では本末転倒だ。
「お相手の方は誰なの?私が知ってる人かしら?」
「相手は来栖航輝さん」
恐るおそる彼の名前を出すと、真由子はますます怪訝そうに、じいっと鈴菜を眺めた。
「来栖さんって……例の?」
「ええ。例の来栖さん」
予想だにしない名前がでてきて、ますます頭が混乱してきたのか、真由子は悩まし気に唸った。
「彼はあとくされのない契約結婚がしたいそうなの。彼が相手ならちょうどいいかと思って」
鈴菜は淡々と話すとコーヒーカップに口をつけた。
香ばしい苦みが口いっぱいに広がっていく。
「あなたは本当にそれでいいの?」
真由子は娘の選択に戸惑いを隠せない様子だ。
普通、契約結婚するなんて正直に話さないだろう。
けれど、航輝が入会希望者だと知っている真由子にはどうしても話を通しておかなければならない。