この度、俺様パイロットとご成婚しました。

 ◇

 契約結婚の合意から数日後。

(待ち合わせ場所はここであってるんだよね?)

 鈴菜はラベンダー色のサマーニットに白のフレアスカートを着て、待ち合わせ場所の駅前ロータリーで航輝を待っていた。

 今日は彼の母親との顔合わせの日で、鈴菜は朝から張り切って身支度を整えた。

(少し甘めだった?)

 普段から女性会員へのファッションコーディネートやメイク指導も行っているため、婚活ファッションにはそれなりに詳しいが、今の自分の服装が結婚相手のご両親に会うのに適しているかと言われると、少々怪しい。

(もっと控えめな服装にすればよかった?)

 会員にはいつも『自信を持って!』と言って送り出しているが、自分のことになると急に不安が付き纏う。

(リップの色だけでも変えよう)

 そう思ってバッグの中のリップに手を伸ばそうとしたそのときだ。

「鈴菜!」

 ロータリーに停まった車の運転席から航輝が下りてくるのが見えて、鈴菜はすぐに車に駆け寄った。

「おはようございます」
「悪いな。こんなところまで来させて」
「いいえ。とんでもないです」
「固いな。これから俺たちは結婚の挨拶に行くんだろう?もっとリラックスしろよ」

 航輝は鈴菜の左手を取ると、助手席の扉を開け、恭しくエスコートしてみせた。

「ありがとう」
「どういたしまして」

 お飾りの妻とはいえど、夫婦になるのだ。
 疑われない程度には、仲の良さを見せつける必要があるし、もっとくだけた口調の方がいいのかもしれない。
< 48 / 132 >

この作品をシェア

pagetop