この度、俺様パイロットとご成婚しました。
『一度は他の企業で働くべきだ』という父親の方針のもと、就職先を探していたときに、たまたま大学に来ていたOBからパイロットにならないかと誘われたのだ。
正直、心惹かれるものがあった。
それに、普通の企業人として働くとどうしてもスペードホテルの名前がつきまとうが、空に飛び立てば肩書は関係ない。
そう思った航輝は、パイロットを志し、無事就職試験を突破。今もBCJの副操縦士として、世界中を飛び回っている。
黒崎の後ろ姿が見えなくなると、航輝はふと左手に嵌めた指を視線を落とした。
(まさか結婚する気になるとはな……)
鈴菜のことを考えるだけで口もとが緩んでいくのが自分でもわかる。
ミルクティー色の艶やかなロングヘア。ぱっちりとした二重とビューラー不要のくるん伸びたまつ毛に、みずみずしくぽってりとした桜色の唇。真っすぐな眼差しには、強い意志があふれている。
(鈴菜みたいな女性は初めてだ)
初めて彼女と出会ったときのことを思い出し、クスリと笑った。
『本気で結婚相手を探すつもりがないなら出て行ってください!』
ピシャリと言い渡されたときは、ガツンと頭を殴られたような衝撃が走った。
結婚は家同士との繋がりを強固にするもの。
そういう価値観の中でずっと生きてきた。