この度、俺様パイロットとご成婚しました。
4.ニューヨークへ
ふたりが再び顔を合わせたのは結婚指輪を購入してから二週間後だった。
「おはよう、鈴菜」
「おはようございます」
先日と同じように車に乗って登場した航輝は運転席から片手をあげて、鈴菜に声をかけた。
今日は役所に婚姻届を提出する予定で、朝から区役所のある駅前で待ち合わせをしたのだ。
朝の挨拶もそこそこに助手席に身体を滑り込ませると、すぐに車が発進する。
「引っ越しの準備は進んでいるのか?」
「そうですね。あと少しで終わります」
航輝との共同生活は、契約結婚の条件のひとつだ。
相談した結果、鈴菜が彼の住まいに引っ越すことになった。
というのも、航輝は空港から近い湾岸エリアにあるマンションでひとり暮らしをしているそうで、住人がひとり増えてもさほど問題にならないほどの広さがあるらしい。
ビリーブマリッジの事務所からもそれほど遠くないので、鈴菜の負担も少ない。
大学卒業を機にひとり暮らしを始めて五年ほど経つが、八畳のワンルームの中は特に物が多いわけではない。
休日や仕事の合間を縫って作業をしたおかげで、引っ越しの日までに問題なく荷造りも終わりそうだ。
「手際がいいな。仕事もあって大変だったんじゃないか?」
「別に。これぐらい平気ですよ」
褒めてもらったというのに、鈴菜はお礼も謙遜もせず窓の外を眺めたまま素っ気なく返した。
警戒心と不信感をあらわにしたつれない態度の原因はひとつしかない。