この度、俺様パイロットとご成婚しました。

 ネイビーのジャケットとオックスフォードシャツ姿の航輝がロビーに現れたのは、達夫と別れた五分後のことだった。

「鈴菜!ごめん。待たせたか?」
「あ、いいえ。平気です。私が早く来ただけなので」

 まるでデートみたいだなと当たり前の感想を抱く。
 よく考えてみれば、結婚前は用事を済ませるための外出という感じだった。
 あてもなく街を歩くというデートらしいデートは初めてかもしれない。

「それで、どこに行きたい?」
「あっ。ここなんですけど……」

 鈴菜はトートバッグからスマホを取り出し、メモしておいたベーグル店の名前を教えた。

「ああそれなら俺も知ってる。これならここからそう離れていない。歩いて行こう」

 航輝はさりげなく鈴菜の手を取り、ホテルの外へといざなった。

 まだ十月だというのにマンハッタンに吹きつける風は実際の気温よりも冷たさを感じる。

 つないだ手の感触にくすぐったいものを感じるが、振りほどけばこの居心地のいい温かさが失われてしまうは明らかだ。

(寒いのは苦手だし……)

 鈴菜は首をすくませタートルニットに顔を埋めながら、自分に言い訳した。

「ニューヨークにはよく来るんですか?」
「まあな、日本からの直行便もあるし、二、三か月に一回ぐらいだな」
「だから英語がペラペラなんですか?」

 昨日のチャリティーパーティーでも思ったが、彼の操る英語は流暢なものだった。

 鈴菜のたどたどしい英語とは比べ物にならず、どちらかといえばネイティブ寄りだ。

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