富豪たちは溺愛がお好き。
従者視点


主様は可哀想なお方だ。


――初恋


誰もが人生に一度は経験する権利があるもの。

主様は権利を奪われてしまった。

奥様を亡くされ、厳しくなられた旦那様。

次期当主としての重圧と誰も頼れない状況。

その状況下で普通の子供なら破綻してしまっただろう。

・・・主様は違う。

何をさせても短期間で道を極め、道を辿った者よりも高みへ至る。

零から一を生み出す。

一を聞けば十を導く。

そんな子供がいたならば大人が放っておかないのは明白。

主様は欠けていらっしゃった。

自分の役割を理解していたともいうのか。

それは、欠けたそれは・・・

一つの欠片で、充分だった。

「おにいちゃんあったかいね」

「ぼくはつめたいよ。」

女の子は主様に話しかけて笑ったようだった。

「おひさまみたいだね。わたしのおひさま」

欠片は――――――はまる。

❇❇❇

後で知ったが女の子は自分の名前と似ているおひさまが好きだったようだ。

主様はその子を探し、同じ中学校に入った。

……旦那様との約束で一位を取り続けることになっても。

「俺のおひさまは夜に煌めくんだ」

「俺はおひさまよりお月様の方が大好きだよ」

そう言っても気付かない始末。

なんとも鈍感な”お月様”なんだろうか。

主様はつくづくお可哀相なお方だ。

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