別にあなたに愛されなくても。〜死に戻った侯爵夫人は、二度と夫を愛さない〜
「奥様、奥様! 到着いたしましたよ!」
「んぅ……おはよう、サラ……」
「……奥様って、結構寝起き悪いですよね」

 サラに身体をがくがくと揺らされて、目が覚めた。
 馬車の窓から朝日が差し込んでいる。

 そして、ゆっくりと馬車を降りたそこには……見慣れたエルフィナード伯爵邸の姿があった。

 あぁ、私、帰ってきたんだわ……。

 門番が私の顔を見て飛び跳ねた。
 すぐに開門してくれて、伯爵邸の庭園に足を踏み入れる。

 見慣れた花畑、小さな噴水、白くてきれいなベンチ……。
 全てが懐かしく、私を抱きしめてくれているようだった。

 扉を守っている兵士が、またもや私の姿を見て驚きながら急いで扉を開ける。

 私はサラとアントニーに軽く目配せしてから、伯爵邸のロビーへ入った。

「……ただいま」

 ぽつりと呟いた声が、ロビーに反響する。早朝すぎて、まだ誰も起きていないのかしら。
 ……かと思えば、少ししてバタバタという忙しない足音が聞こえてきた。

「シャーリン……!? あぁ、シャーリンなのね!!」
「……お母様……」

 久しぶりに見る、母の顔だ。

「あなた! シャーリンが!! シャーリンが帰ってきてくれたわ!!!」

 母が叫ぶ。すると、すぐに父も早足で廊下から現れた。二人して、転びそうなくらい一生懸命に階段を下ってくる。

「シャーリン、こんな時間にどうしたの? 侯爵様と喧嘩でもした? シャーリン? ……あらやだ、どうして泣いてるの?」
「っ……泣いて、ないわ……」
「私たちは何を言われても、シャーリンの味方だ。だから、なにがあったのか話してみなさい」

 母が私の涙を拭う。父が優しく私の頭を撫でる。
 私はたまらず、二人に抱き着いた。

「うっ……わ、私、ずっと……つらかった、つらかったの……!!!」

 ロビーに私の泣き声がこだまする。二十歳にもなって、こんなの情けないと思うけれど。
 でも、二人は何も言わず、ただ私のことをしっかりと抱きしめ返してくれた。

 そのことが、私は嬉しくてたまらなかった。




 ____私、今度こそちゃんと帰ってこれたんだわ。
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