灰色の日々に、君が灯した甘い色
第1話 灰色の日々
この世界は、モノクロだ。
見上げれば無機質なビル群。
視線を落とせば、規則的な足音を響かせる無彩色のアスファルト。
目の前に、若い男女の会社員が笑い合いながら歩いていた。
お互いの左手の薬指には、銀色の指輪。
今度は私の横を、熟年夫婦が寄り添って歩いている。
混雑した交差点で、奥さんが左手を伸ばして旦那さんの腕に掴まった。
私には無縁の世界の住人たちが、視界を通り過ぎていく。
自分の左腕に目を落とすと、雑に畳んだいつもの灰色のカーディガン。
この真夏に、ニットのカーディガンを持ち歩いているのは私くらいかも。
さすがに暑いから外では羽織らないけれど、これは私の必需品。
この世界に溶け込む、一番私らしい色。
こうやっていつも、色のない服を着て、家と会社を往復する味気ない毎日を送る。
皮肉なことに、私の名前は『翠』という。
みずみずしい緑色を連想させるこの名前が、ずっと嫌いだった。
――そう、嫌いなはずだった。
私よりずっと年下の……彼に、出会うまでは。
見上げれば無機質なビル群。
視線を落とせば、規則的な足音を響かせる無彩色のアスファルト。
目の前に、若い男女の会社員が笑い合いながら歩いていた。
お互いの左手の薬指には、銀色の指輪。
今度は私の横を、熟年夫婦が寄り添って歩いている。
混雑した交差点で、奥さんが左手を伸ばして旦那さんの腕に掴まった。
私には無縁の世界の住人たちが、視界を通り過ぎていく。
自分の左腕に目を落とすと、雑に畳んだいつもの灰色のカーディガン。
この真夏に、ニットのカーディガンを持ち歩いているのは私くらいかも。
さすがに暑いから外では羽織らないけれど、これは私の必需品。
この世界に溶け込む、一番私らしい色。
こうやっていつも、色のない服を着て、家と会社を往復する味気ない毎日を送る。
皮肉なことに、私の名前は『翠』という。
みずみずしい緑色を連想させるこの名前が、ずっと嫌いだった。
――そう、嫌いなはずだった。
私よりずっと年下の……彼に、出会うまでは。