Fahrenheit Ⅳ
とびっきりの甘い夢を。
♠ K ♠
せっかくの土曜日なのに、やることがなく俺はまたも一日をだらだらと過ごした。
昔の映画を観ながら、昼から酒を呑み、昼寝をして、起きたら簡単な夕食を作るつもり。
瑠華のいない休日はなんて味気ないものなんだ。
同じような過ごし方をしていても二人で笑い合っていたら、心が満たされていたのに。
心は空っぽのまま。
酒を呑もうとしたがその気にもなれず、昼寝をしようとしたものの、案外早く目が覚めてしまい夕飯の支度をするかと思い立ち冷蔵庫の中を覗いたが、これまたまたまともな料理ができる材料が全然揃ってなかった。野菜室にネギと白菜とトマト、冷蔵庫には卵と牛乳、納豆と豆腐、冷凍庫には豚肉が少々と作り置きしておいた料理が少し。
何もする気が起きなかったが、料理している間だけは何も考えなくてもいい。仕方ない、スーパーへ行くか…とマンションのエントランスに降りると、両側に広がるコンクリの上の生垣の中から「ミー、ミー」と小さな何かの鳴き声が聞こえた。
何だぁ?俺は声のなる方、葉をがさがさとさせて中を覗き込むと、柔らかい土の上これまた片手に乗る程の小さな猫が何かに引っかかったのか動けずにいるようだ。
慌ててその子猫を抱き上げると前脚にざっくりと傷跡が残っていた。
生垣の枝で切ったのだろうか。
その猫は首輪などなく、毛並みもごわごわしていて泥だらけ、とてもじゃないがどこかの飼い猫が逃げ出してきた、とは思えなかった。
とりあえず、この怪我、このままにしといたらヤベーよな。
俺は慌てて近くの動物病院を調べて、運よく徒歩で行ける範囲、しかも時間ギリギリで行けそうな場所を見つけ、猫を抱えながら走り出した。


