Ma Chérie
第一章
運命の出会い
休日の昼下がり。
澄み切った青空の下、春の柔らかな陽射しが街を優しく包み込んでいた。
街路樹の若葉は風に揺れ、舞い散る桜の花びらが石畳をゆっくりと滑っていく。
ショーウィンドウには春の新作が並び、カフェから漂うコーヒーの香りと、人々の穏やかな笑い声が街全体を心地よい空気で満たしていた。
休日らしい、どこまでも穏やかな時間。
その日――
まだ誰も知らなかった。
街で最も恐れられた男と、
街で最も美しい一人の女性が、
運命的な出会いを果たすことを。
「セレナ、あのお店見てみない?」
弾むような声が響く。
隣を歩く少女が、嬉しそうにショーウィンドウを指差した。
肩まで伸びた栗色の髪。
人懐っこい笑顔。
表情がころころ変わるその少女は、ミサキ。
明るく世話好きで少し怖がり。
それでも、大切な人のためなら勇気を振り絞れる優しさを持つ、セレナの親友だった。
その隣で足を止めた一人の女性が、小さく微笑む。
陽射しを受けて柔らかく輝く、淡い色の長い髪。
透き通るように白い肌。
大きく澄んだ瞳には、穏やかさと優しさが宿っている。
飾り立てることのない自然な美しさ。
どこか儚く、それでいて凛とした気品を纏うその姿は、春の街並みの中でもひときわ目を引いた。
セレナはミサキの視線の先を見る。
「本当だ。かわいいね」
「でしょ!」
二人は顔を見合わせ、小さく笑い合う。
今日は、ミサキと約束していた休日。
白いブラウス。
淡い色のロングスカート。
飾り気のない装い。
それでも――
彼女が歩くだけで、街の景色はまるで一枚の絵画のように美しく映る。
春風が長い髪を優しく揺らし、陽射しが横顔を柔らかく照らす。
その一瞬に、通り過ぎる人々の足が自然と止まった。
「あの人……すごく綺麗」
「モデルさんかな」
「いや……どこかのお嬢様みたい」
そんな囁きが、春風に乗って静かに流れていく。
けれど、その声はセレナには届かない。
それは昔から変わらない日常だった。
彼女はただ、大切な親友との休日を心から楽しんでいた。
一方、その頃――。