財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 俺の視線は、完全に一点へと固定されていた。
 
 数日ぶりに見た愛しの妻の隣には、長身で整った顔立ちの男がいる。
 柔らかく微笑みながら、李茉と楽しそうに会話をしながら歩いていた。
 やがて、二人は雑貨屋へと入っていった。

 誰だ、その男は……。李茉に限って、浮気をするとは思えない。
 頭の片隅にちらつく〝契約結婚〟という言葉。
 俺自身は本気で彼女と結婚したいがために、契約結婚の話を持ちかけたが、彼女自身は俺に興味もなかったと思う。
 いや、そもそも、名前を出さなければ、記憶にすらなかっただろう。

 けれど、十日前の夜に、李茉が気持ちを打ち明けてくれたことで、俺らは形だけの夫婦ではなく、心でも繫がったはず。
 なのに、今目の前に起きているこの状況はなんだ……!
 あの夜に、俺らは相思相愛になったんじゃなかったのか……?

 俺は無言のまま、店の外から二人の姿をじっと目で追った。

「奥様に連絡を入れましょうか?」

 及川がスマホを取り出すが、俺は横目で鋭く制止した。

「……必要ない」

 声が低く落ちる。
 李茉には、兄はいないはず。従兄か、はとこだろうか。

 雑貨屋を出てきた二人は、肩を並べて別の店へ向かう。
 李茉は笑っている。その笑顔が、俺の胸を鋭く貫く。

 ──俺といる時より、楽しそうじゃないか。

 きつく握りしめた拳が、わなわなと震えた。胸の奥が、焼けるように熱い。無意識に、眉間に深いしわが寄る。

 俺ですら、デートらしいデートなんて一度しかしていないのに、李茉の隣にいる男は、自然な笑みを彼女に向け、買い物デート自体を楽しんでいる。
 そして二人は、ランジェリーショップへと入っていった。

「っ……‼」
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