財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 思わず、息が止まる。
 雑貨や服とは違い、下着売り場という空間が、俺の心臓を一撃で突き刺したような感覚に陥る。

 ──俺以外に、下着姿を見せる男がいるのか。

 想像しただけで、体の芯が凍りつくほどの痛みが走った。
 胸が苦しい、やりきれない。
 どうしたら、俺にもあんな笑顔を向けてくれるのだろうか。

 ランジェリーショップで買い物を済ませた二人は、駅ビルのレストラン街にある和食処【なごみ】へと入っていった。

「社長……? どうされますか?」

 及川の煽るような声かけに、我慢の限界に達した俺は、片手を上げ静止させた。

「ここで待ってろ」
「……はい」

 店の入り口に及川を残し、俺は店の暖簾をくぐった。

「いらっしゃいませ。お客様、何名様で──」
「今さっき入ってきたジャージ姿の男女の連れだ。案内してくれ」

『連れ』という言葉に、一瞬視線を泳がせた店員だが、真剣な顔つきの俺に根負けしたようだ。
 不安そうな顔色を浮かべながら、軽く会釈した。

「……承知しました。ご案内いたします」

 和食処の店員の後を追い、店内奥へと向かう。

「こちらになります」

 店員に会釈し、襖の前で一呼吸。
 やっと手に入れた女を、簡単に手放して堪るか。
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