財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 知人と買い物をするのをデートと言われたら、そうなのかもしれない。
 私は心の底から反省した。
 彼が背負っている立場を考えたら、決してしてはいけない行動だったのに……。
 多忙な夫に構ってもらえないからと、自分勝手に行動しすぎたことに気づく。
 申し訳なさすぎて、視線が彼の胸元へと落ちた瞬間、手首を拘束する力がフッと弱まり、肩にトンと重みを感じた。

「どうしたら、お前の心が手に入るんだよ……」

 甘い声音が鼓膜を揺らす。
 それまでの威圧感はもうどこにもなくて、それどころか、私以上に弱々しい声音が玄関に吸い込まれていった。

「……惺也くん?」

 肩に感じる彼の重みに、全身から嬉しさが溢れてしまう。
 だって惺也くんは、私が好きだから怒っているんだし、私を愛しているから――私を求めているんだよね?
 その事実が、胸を締めつけるほど嬉しくて、目尻から一筋の涙が伝う。

「一緒にいたのは職場の同僚で、彼の奥様は、私の指導係でもあった先輩教諭なんです」
「……は?」
「その奥様の誕生日が来月初めで、月末は業務が多忙なので、今のうちに誕生日プレゼントを買っておきたいという彼の希望もあって、一緒に誕プレ探しをしていただけです」
「……っ、なんだよっ‼」

 私の言葉で安堵したのか、彼は玄関に頭を抱えて蹲ってしまった。
 惺也くんはいつでも完璧に物事をこなすから、こんな風に取り乱すことを今まで見たことがなくて、思わず、可愛いと思ってしまった。
 だって思春期の男の子みたいに、私の一言で、一喜一憂しているみたい。

「……惺也くん」

 私の呼びかけに反応するように立ち上がった彼は、「カッコ悪っ……」と呟いた。

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