財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 翌日、及川さん本人が直接実家を訪れ、『片桐キャピタルではなく、片桐惺也個人での融資契約をしているため、〝九石精工〟の名前は伏せられているので、ご安心ください』と、わざわざ説明してくれたらしい。
 おそらく、惺也くんが手を尽くしてくれているのだろう。
 おかげで、九石精工の名前は現在も非公開になっていて、実家に報道陣が押し寄せるような事態にもなっていない。

『でも──だからこそ、全責任が惺也くんの肩にのしかかっているのではないか』と、父は言っていた。
 私もそう思う。
 彼は四六時中矢面に立たされているが、元々は、九石精工が負債を抱え込まなければ、こんな事態にならずに済んだのかもしれない。
 惺也くんにとっては〝五億円〟は、はした金だったかもしれないが、九石精工にとっては、最後の一手だった。

 同級生だし、財閥の御曹司だし、大企業の社長だからと、彼からの提案を軽視してしまったのではないかという後悔が募る。
 私があの時、彼の提案を受け入れなければ、片桐グループ全体の損失も出なかっただろうし、何万、何十万という人々の生活を脅かす事態にも陥ってなかったはずだ。その事実が、胸をきつく締めつける。
 株価の大暴落を考えると、今回の損失のすべての責任を彼一人が負わされるんじゃないか──そう思うと、心配が尽きなかった。

 九石精工の負債額は五億円。
 けれど、片桐グループ全体の損失額は数千億から数兆円にも及ぶとニュースで言っていた。
 ……すべて、私のせいだ。
 父の会社を救うために、惺也くんの提案を呑んだ。その結果、彼は今、世界中から責任を追及されている。
 九石精工との関わりも、私の存在ですら、彼の負担になっているはず。
 この数日間、ずっと考え続けて──私は一つの答えを出していた。
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