財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 カメラが一斉に俺へと向けられる。
 愛華が凍りついたように俺を見る。
 新藤は一つ息を吐き、及川は小さく頷いた。

 俺は及川が掲げるタブレットの画面を一瞥し、ゆっくりと口を開いた。

「今から二分ほど前に──アミル財団が、宝生インダストリー社を買収したことを、この場で正式に発表いたします」

 会場が、一瞬凍りついたような静けさに包まれた。

「アミル財団って言ったか!?」
「世界最大規模の慈善団体の……あのアミルか!?」
「毎年、国家予算にも匹敵する額を寄付するという、あのアミル財団?」

 記者たちが口々に叫び、会場の空気が一瞬で変わった。
 愛華は震える手でマイクを握りしめ、「今、……何て?」と声にならない声を漏らす。
 俺は内心ほくそ笑みながら、至極冷静に言葉を続けた。

「申し遅れました。アミル財団の代表をしております──片桐惺也と申します」

 会場が悲鳴のようなどよめきに包まれた。

「片桐惺也が……あの謎の代表だったのか!?」
「決して表舞台に出ないとされていた人物が……片桐氏!?」
「こ、これは……大スクープだぞ!」

 記者たちが一斉に手元のパソコンを入力し始めた。
 無数のフラッシュが焚かれ、笑みを浮かべる俺と、その隣には顔から血の気が引いていく愛華とのツーショットだ。
 俺は壇上の隅に立つ及川へ目を向けた。

「及川」
「はい」

 及川はホテルスタッフに指示を出し、会場内の照明を少し落とさせ、「あちらの壁面をご覧ください」と会場内に呼びかけた。
 雛壇にはド派手な金屏風があるため、会場の横の壁をスクリーンに見立てて、映像を映し出す算段なのだ。
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