財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 いつもの三つ揃えではなく、カジュアルな服装なのに洗練されていて、上品さが自然に漂っている。

「いい天気だな」
「……そ、そうですね」

 お天気より、あなたの存在感の方が気になるんですけど……‼
 彼は、どこかの映画祭で主演俳優がレッドカーペットに降り立つ時みたいな空気を纏っている。
 後光が差してる……そんな感じがした。
 すると、どこからともなくご近所の人たちが集まり始めている。
 下町の変哲もない通りにリムジンが停まっていたら、そりゃあ、興味津々だよね。

「い、行きましょうか……」

 慌てて彼の腕を掴んで車に乗り込む。スモークガラスなのがありがたい。
 ご近所の人の視線が痛いのなんのって……!
 シートベルトを締めると、車は緩やかに走り出した。

 本革のシートが体を包み込む。日中なのに車内は少し暗くて、シャンデリアが眩いほどに光を放っている。

「……どこに向かってるんですか?」
「行けば、わかる」
「っ……」

 ああ、そうですか。私は黙って乗っていればいいんですね!
 デートって、もっとドキドキして、わくわくするものだと思っていたけど……。
 どこへ行くのかもわからないから、不安で別の意味でドキドキしている。
 今日一日、楽しめるかな……。
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