財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 建物を後にした私たちは、広々とした庭に出た。
 すると、庭の一角にヘリポートがあり、すでにプライベートヘリがローターを回していた。
 え……、今からヘリコプターに乗るの……!?

「寒くないか?」

 そう言って、彼は迷いなく着ているジャケットを脱ぎ、私の肩にかけてくれた。
 ヘリの風圧でドレスの裾が大きくはためき、ジャケットが飛ばないように私の体を抱き寄せた。

 けれど──、ドレスの裾がめくれようが、ジャケットが飛んでいこうが、そんなことはどうでもいい。だって……私、……高所恐怖症なのに……‼

 足が竦んで、一歩が出ない。
 なのに片桐くんの足が前に進んで、私の体も勝手に前へ進んでしまった。
 有無を言わさず歩かされて、あれよあれよという間にヘリコプターに乗らされてしまった。

「これ、つけて」

 差し出されたヘッドセットを受け取り、震える手で耳に装着すると、ほんのわずかだが音が遮られた気がして、気持ちが少し落ち着いた。
 きちんとヘッドフォンが装着できているか確認してくれる。
 マイクの位置を整えるために、彼の指先が頬に触れた瞬間──胸がとくんと高鳴った。
 顔を近づけた彼の吐息が、頬を掠める。

「……聞こえるか?」

 インカム越しの低い声が耳の奥に届いて、また心臓が大きく跳ねた。
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