財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 肩がトントンと叩かれる。
 スッと顔の横を掠めた指先が差す方向に視線を向けると、夜空に大輪が咲いていた。

 色とりどりの花が咲き乱れるみたいに、次々と打ち上がる。
 その花火を絶景ポイントで見せようと、機体が大きく傾き、旋回し始めた。

「っ……」

 体がシートからふわりと浮き、次の瞬間には逆に押しつけられる。
 あ……もう……ダメ……。

 胃の不快感だけじゃない。手足がスーッと冷えていく感覚。
 脳がぐわんと揺れて、全身に力が入らない。

 浮遊感と突然の重力の圧。
 緊張や不安。
 そして、アルコールの影響もあって──意識が次第に遠のいていった。

「おい……李茉……李茉っ‼」

 かすかに耳に届いたのは、焦りが滲む声音。
 顔がぐいっと持ち上げられ、視界に映る彼が動揺しているのがわかる。

「お酒、と……乗り……もの酔い……な、だけだから……」

 途切れ途切れの言葉だけど、今はこれが限界だった。

 彼の腕に抱きしめられるぬくもり。
 何度も、何度も、私の名前を呼ぶ彼の声。
 その優しさに包まれたまま──私はいつの間にか、意識を手放していた。
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