愛が全てじゃないけれど
ちょっと意外だった。
和より洋かなと、勝手に思っていたから。
「今度、行こう。でも、今日はテーブル席にしようか。和洋中なにがいい?」
タイトスカートだから気遣ってくれた……?
彼と会った二回とも、私はパンツスーツだった。
容姿からももちろんだけれど、こうした気遣いができる男性はモテるだろうなと思う。
「和……ですかね。もしくは箸を使っても恥ずかしくない洋」
「いいね。俺もナイフとフォークでステーキを切るより、切って出してくれるとんかつの方が安心する」
「いいですね、とんかつ」
「うん。でも、今日はもう少し格好つけさせて」
そう言うと、峰濱さんはスマホを操作する。
すぐにポロンッと通知音がして、彼はハンドルを握り、車を走らせた。
街中に向かって三十分ほどでビルに囲まれる。
高級感漂う駅名を横目に、どこに行くのかとドキドキしていたら、赤信号で停車した。
「誤解……というか警戒されないように言っておくけど、ホテルに行くから」
「え?」
「そこのホテルの店」
フロントガラスを指さされ、某有名ホテルの目の前だと気づく。
めちゃくちゃ高級そう……。
「言い忘れましたが、音を立てずに食事をするのもうまくないかも……」
「ははっ。俺はうまくないなんてレベルじゃないよ」
「少し見栄を張りました」
「え?」
「音を立てずに食事をしたことがありません」
「心配しなくても、スープをすする音より肉が焼ける音の方が大きいよ」
「焼肉?」
「おしい」
信号が青になり、車が地下駐車場へと下っていく。
看板にあるホテル内のショップリストが目に入った。
最上階の二十三階にあるいくつかのレストランのひとつに胸が躍る。
鉄板焼き――!
他のレストランはフレンチと中華。
肉を焼く音が聞こえるのは、鉄板焼きだけ。
「どう? お気に召した?」
「鉄板焼き、初めてです!」
「良かった」
車を停めて、エレベーターで最上階に上がる。
五基のうち、高層階行きのエレベーターは一番端にあり、ガラスの向こうに夜景が見える。
闇というほどではない、薄暗い中で控えめに輝く灯りを見ていると、あっという間に最上階に到着した。
エレベーターホールから右手に行くと、門が現れた。
門の足元には艶のある丸い石が敷かれ、格式高い神社の鳥居のよう。
すご……。
ホテルの中に造られているにしては本格的で、足元からほんのり照らすオレンジ色のライトが幻想的な雰囲気を醸し出していて、この門をくぐると異世界に行ける、と言われたら信じてしまいそうな佇まい。
「さあ、行こう」
軽く腰に手を添えられて、それにドキドキしているのか、初めて訪れる高級感しかないお店にドキドキしているのかわからないまま、足を踏み出す。
店内は窓際に半円のテーブルがふたつあり、どちらも十脚ほどの椅子に囲まれている。
窓に背を向けて料理人が立ち、お客は夜景を眺めながら食事できるのだ。
他にも、普通のテーブル席がいくつかと、もう一辺の窓があるであろう場所は個室のようだ。
「急だったから個室は取れなかったんだけど」と言いながら、峰濱さんが店員の後ろをついていく。
やはり、私の腰にそっと手を添えて。
ヒールが少しだけ沈むカーペットは、ただでさえ履き慣れていない靴に慎重になっている私のふくらはぎと足首に負荷をかける。
そのため、峰濱さんが支えるようにすぐ隣にいてくれるのはありがたい。
和より洋かなと、勝手に思っていたから。
「今度、行こう。でも、今日はテーブル席にしようか。和洋中なにがいい?」
タイトスカートだから気遣ってくれた……?
彼と会った二回とも、私はパンツスーツだった。
容姿からももちろんだけれど、こうした気遣いができる男性はモテるだろうなと思う。
「和……ですかね。もしくは箸を使っても恥ずかしくない洋」
「いいね。俺もナイフとフォークでステーキを切るより、切って出してくれるとんかつの方が安心する」
「いいですね、とんかつ」
「うん。でも、今日はもう少し格好つけさせて」
そう言うと、峰濱さんはスマホを操作する。
すぐにポロンッと通知音がして、彼はハンドルを握り、車を走らせた。
街中に向かって三十分ほどでビルに囲まれる。
高級感漂う駅名を横目に、どこに行くのかとドキドキしていたら、赤信号で停車した。
「誤解……というか警戒されないように言っておくけど、ホテルに行くから」
「え?」
「そこのホテルの店」
フロントガラスを指さされ、某有名ホテルの目の前だと気づく。
めちゃくちゃ高級そう……。
「言い忘れましたが、音を立てずに食事をするのもうまくないかも……」
「ははっ。俺はうまくないなんてレベルじゃないよ」
「少し見栄を張りました」
「え?」
「音を立てずに食事をしたことがありません」
「心配しなくても、スープをすする音より肉が焼ける音の方が大きいよ」
「焼肉?」
「おしい」
信号が青になり、車が地下駐車場へと下っていく。
看板にあるホテル内のショップリストが目に入った。
最上階の二十三階にあるいくつかのレストランのひとつに胸が躍る。
鉄板焼き――!
他のレストランはフレンチと中華。
肉を焼く音が聞こえるのは、鉄板焼きだけ。
「どう? お気に召した?」
「鉄板焼き、初めてです!」
「良かった」
車を停めて、エレベーターで最上階に上がる。
五基のうち、高層階行きのエレベーターは一番端にあり、ガラスの向こうに夜景が見える。
闇というほどではない、薄暗い中で控えめに輝く灯りを見ていると、あっという間に最上階に到着した。
エレベーターホールから右手に行くと、門が現れた。
門の足元には艶のある丸い石が敷かれ、格式高い神社の鳥居のよう。
すご……。
ホテルの中に造られているにしては本格的で、足元からほんのり照らすオレンジ色のライトが幻想的な雰囲気を醸し出していて、この門をくぐると異世界に行ける、と言われたら信じてしまいそうな佇まい。
「さあ、行こう」
軽く腰に手を添えられて、それにドキドキしているのか、初めて訪れる高級感しかないお店にドキドキしているのかわからないまま、足を踏み出す。
店内は窓際に半円のテーブルがふたつあり、どちらも十脚ほどの椅子に囲まれている。
窓に背を向けて料理人が立ち、お客は夜景を眺めながら食事できるのだ。
他にも、普通のテーブル席がいくつかと、もう一辺の窓があるであろう場所は個室のようだ。
「急だったから個室は取れなかったんだけど」と言いながら、峰濱さんが店員の後ろをついていく。
やはり、私の腰にそっと手を添えて。
ヒールが少しだけ沈むカーペットは、ただでさえ履き慣れていない靴に慎重になっている私のふくらはぎと足首に負荷をかける。
そのため、峰濱さんが支えるようにすぐ隣にいてくれるのはありがたい。