あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
夕方、課長の席の横に立った。
先週と同じ位置に立ったせいか、課長が露骨に身構えた。
「……今度は何だ。また封筒か」
「いえ。ご報告です」
このみは、用意してきた言い方をそのまま使った。
私事ですが、篠宮さんとお付き合いすることになりました。
業務上のカウンターパート関係にあたるため、利益相反の観点から上長に報告します。
課長は、口を半分開けたまま、しばらく固まっていた。
「……そういうのの書式は、ないぞ」
「ないので、口頭です」
「そうか。ない、よな。うん」
課長は姿勢を戻して、意味もなく書類を揃えた。
「仕事に支障が出たら、容赦なく言うからな」
「はい」
「……どうせ部長にもばれるだろうから俺から言っておく。変な伝わり方をするより、いいだろう」
「ありがとうございます」
課長は書類を置いて、少しだけ声の調子を変えた。
「篠宮さんの契約は、再建計画までだろう。……その先のことも、ちゃんと話してるのか」
「……これから、です」
「そうか。まあ、急かすことでもないな」
急かされたのは、たぶん自分の心臓のほうだった。
その先、という言葉が、思ったより深いところに刺さっていた。
席に戻りかけたとき、後ろから、聞こえるか聞こえないかの声がした。
「先週の封筒、すぐに稟議通さなくて正解だっただろ?」
冗談めかした課長の顔。
助かりました、と笑顔で返した。