あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています

「責任者を出せって言ってるんだ!」

作業着の男性が、カウンターに手をついている。
製造一課のライン長、戸倉さんだ。
勤続三十年。
工場の主みたいな人で、ハルシマ文具の社員は、入社時の工場研修では必ず世話になる。

受付側にいたのは、このみだった。

「戸倉さん、どうされ──」

「あんたか。リストを作ってるってのは」

声が、フロア中に通った。
電話をしていた課員が振り返る。
キーボードの音が止まる。

「うちの若いのが言ってたぞ。人事の倉橋さんが、リストラ候補の名簿を集めてるって。あんた、いつも研修生を連れてくる子だろう。真面目な子だと思ってたのになあ」

思ってたのになあ、という言い方が、ズキリと心を刺す。

(でも、違う、とも言えない。データを集めているのは本当のことだし……)

「戸倉さん、あの、それは」

「二課の連中は夜も眠れんって言ってるんだ。あんたらは紙切れ一枚で――」

「その質問の宛先は、倉橋さんではありません」

後ろから、声がした。
振り向く前に、篠宮はこのみと戸倉の間に立っていた。

「私です。再建計画の責任者の、篠宮といいます」

名刺を差し出す。
戸倉さんが受け取らないのを見ると、篠宮はそれをカウンターに置き、その横にペンで何かを書き足した。

「私の直通番号です。守衛室の内線からでも繋がります。夜でも構いません」

「……あんたが、例の」

「はい。首切り屋のほうです」

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