あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
数日後の夜。
打ち合わせが長引いて、気づけば二十一時を回っていた。
いつもは資料の確認だけで終わる打ち合わせが、今日に限って長いのには、理由があった。
「評価の調整会議の、実際の進め方を教えてください。規程に書いていない部分を」
夕方、篠宮にそう頼まれたのだ。
規程なら、もう渡してある。
ただ、紙に書いていない運用は、担当者の頭の中にしかない。
どの部門の声が大きいか。
どの数字が、会議のあとで「直る」のか。
このみは規程の写しを机に開いて、順番に説明した。
話しながら、該当のページに山吹の付箋を貼っていく。
篠宮は、口を挟まなかった。
ノートを取りながら、たまに短い質問だけをした。
「その運用は、いつからですか」
「私が異動してきたときには、もうありました」
「なるほど」
そう言う篠宮は、頷きながら、もうノートの上で何かを組み立て始めていた。
人に何かを教えるのは、久しぶりだった。
営業にいた頃、後輩に教えていたとき以来かもしれない。
教わる側の目が真剣だと、こんなに話しやすいものだったか。
気づけば、机の角を挟んで、資料を指す互いの指が近い。
近いことに気づいたのは、説明が終わってからだった。
「また、わからないことがあればいつでも聞いてください」