あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
「たぶんこれはリストの一部で、実際は何枚にも分かれとるんだろうが、他のはシュレッダーにかけられとったわ」
あきらめたような戸倉さんの言葉。
「こんなリスト、人事部には届いていません」
とこのみが言い、少し揺れる声で続ける。
「私、こんな案、見たことがないです。配置転換なら、必ず人事を通るはずで」
「知っています」
篠宮の声が、平らなままこのみの言葉をさえぎる。
篠宮の目はじっと紙を見つめている。
「戸倉さん。これは私が預かります。拾った方の名前は、誰にも言わないでください。私にもです」
「……あんたに渡して、よかったんか」
「宛先は合っています」
戸倉さんは、ふ、と笑った気がした。
「頼んだぞ、首切り屋」
戸倉さんが出ていくと、篠宮は紙を鞄の内ポケットにしまった。
「倉橋さん。これも、まだ誰にも」
「……はい」
「あの部屋を、正式な部署にするための案です。そうなる前に、止めます」
そう言う篠宮の顔は、少しだけ、怒っているように見えた。
午後の面談の合間、記録の整理をしながら、このみは四階の奥のあの部屋を思い出していた。
電話機のない机。
名前の書かれた段ボール。
あの段ボールの持ち主の名前が、さっきの紙の一番上にあった。