あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
そして、企画案が稟議に出されているということは、これから制度化されるということだ。
一度、決まってしまった制度を覆すのは難しい。
このみにはそのことが痛いくらいよく分かっていた。
夕方の最終枠は、組合の職場委員だった。
いちばん強硬だと言われている社員。
案の定、面談は延びに延びて、終わったのは二十一時半だった。
駅に着いて、このみは電光掲示板の前で固まった。
本社方面への接続、最終、二十一時十二分。
「……終わってる」
「終わってますね」
篠宮は掲示板を三秒見て、スマホを出した。
「タクシーで帰りますか?」
このみが言う。
「それだと帰宅するころには日付をまたぎ、翌日に影響します。駅前の宿を取りましょう」
篠宮はそのまま電話をかける。
終わり際に、一度だけ聞こえた。
「二部屋で。──いえ、二部屋です」
電話の向こうが何を言ったのかは、聞こえなかったが、どうやら一部屋と勘違いされたらしい。
電話を切った篠宮は、スマホを内ポケットにしまう。
しまう手つきが、ほんの少しだけ、乱暴だった。
それから、何か言いかけて、やめて、駅前のホテルの明かりのほうへ歩き出した。
(……ホテルの人と、何かあったのかな)