あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
知らないほうがいいのか、知らせるべきなのか。
分からないまま、天井を見る。
(壁の向こうに、いるんだよな……)
考えた瞬間に、打ち消した。
何を考えてるんだ。
あの人はきっと今も、他の資料に目を通しているのだろう。
打ち消したのに、眠りに落ちる直前まで、耳が、隣の部屋の物音を探していた。
翌朝の電車は、来たときと同じ席順だった。
スマホが震える。
千夏だった。
総務は出張の宿泊手配の控えが回るから、隠しようがない。
『ちょっと! 工場出張で宿泊って何!? 聞いてない!』
『終電なくなっただけ。ちゃんと二部屋』
『部屋数の問題じゃなくて〜! で、夜は? ご飯とか行ったの?』
『コンビニ』
『コンビニ!? 逆にそれ、距離近くない!?』
どこがどう逆なのかは、分からなかった。
既読だけつけて、窓の外を見た。
畑が、ビルに戻っていく。
隣で篠宮が、資料から顔を上げずに言った。
「来週、中間説明会を開きます。全部門向けに。再建案の、途中経過を出します」
「……全部門、ですか」
「隠して進めるほうが、コストが高い段階に入ったので。登壇は私です。質問も苦情も、全部私に来るように組みます」
それから、少しだけ間があった。
「荒れますよ、たぶん」
荒れる、の言い方が、天気の話みたいだった。
膝の上の名簿を持つ手に、少しだけ力が入った。