あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
「最初の日、怒鳴り込んできた人と同じ人とは思えなかったです」
「変わっていません」
篠宮は包装のフィルムを小さく折りたたみながら言った。
「戸倉さんの言っていることは初めから変わっていません。ただ、初めはそれをぶつける場所がなかったから、あんなに怒っていたんです」
「……じゃあ、変わったのは」
「私たち聞く側が、きちんと聞く姿勢を見せたからでしょうね」
このみは、お弁当の最後の一口を、ゆっくり噛んだ。
私たち、の中に、自分も入れてもらえた気がしたのは、たぶん、考えすぎ……というか、思い上がりだろうか。
夜のコンビニの窓に、二人ぶんの姿が薄く映っている。
並んで座って、おにぎりとお弁当を食べているだけの、なんでもない眺めだったが、初めて篠宮と出会ったときのことを思い出すと大きな進展だ。
ロビーで鍵を受け取って、別れ際に篠宮が言った。
「明日は七時にロビーで。朝食は済ませてください」
「はい。……あの、今日は、ありがとうございました。宿の手配とか」
「このほうが効率的なので」
久しぶりに聞いた気がした。
部屋は五階の並びだった。
五〇二と、五〇三。
シャワーを浴びて、備え付けの浴衣を着て、それでも目が冴えていた。
鞄の中の、あの四つ折りの紙のことを考える。
名前を並べられていた人たちは、今夜もどこかで普通に眠っていて、自分の名前があの紙に載っていることを知らない。