あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
いつもの平らな声だったが、一瞬、視線が受付席のこのみの上を通過したのがわかった。
その目が何を言っているのかは、読めなかった。
質疑はあと二問続いて、終わった。
閉会のアナウンスの中で、このみは椅子に座り直して、自分の手が冷たくなっていることに、やっと気づいた。
撤収の途中、パイプ椅子を畳んでいると、後ろから声をかけられた。
「いやあ、倉橋さん」
藤堂常務だった。
にこやかに、両手を軽く広げるようにして立っている。
「立派だったねえ、さっきの。若い人がああいう場で立つのは、勇気が要るでしょう。いいものを見せてもらったよ」
「……いえ。出過ぎた真似でした」
「いやいや、ああいうのが会社を良くするんだ。……ただねえ」
声の温度は、まったく変わらなかった。
「今日みたいなことの宛先になるっていうのは、大変なことだよ。篠宮君を見てれば分かるだろう。ま、何かあったら、いつでも私のところにおいで。ドアはいつでも開けてあるから」
肩の横を、通り過ぎていく。
柔らかい香水の匂いが、少し遅れて通り過ぎた。
なぜか、心がざわざわした。
撤収が終わったのは、十九時半だった。
千夏は「あとで! 絶対あとで話聞くから!」と言い残して、総務の片付けに戻っていった。
名簿と筆記用具を抱えて、本館への渡り廊下を歩く。