あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
(これを出せば、私はこの案件から外される。次もない)
分かっている。
分かった上で、申請書のファイルは開いたままだ。
父の三年が、頭をよぎった。
資料室に飼い殺された、あの三年。
仕事のない期間は、履歴書の上では、ただの空白になる。
父はその空白を、面接のたびに説明できなかった。
この申請を出せば、今度は私が、同じ空白を作ることになる。
ピースフェリーを追われたコンサルタントの空白は、何年になるだろう。
……考えかけて、やめた。
数えたところで、答えは変わらない。
渡り廊下で、彼女に言った。
あなたを手放す予定は、私の計画にありません、と。
あの計画に「自分のキャリアを守ること」は、最初から入っていなかったのだと、今になって分かる。
だったら、キャリアが壊れても、計画は壊さない。
すべてを失っても構わない。
ただ、彼女が黙って消える世界だけは、認めない。
申請書の日付の欄に、明日の日付を打った。
(三日ある。三日で足りる)
足りる、とノートに書きかけて、ペンが止まった。
足りないのだ。
彼女の封筒には、間に合っていない。
ペンを置いて、立ち上がって、意味もなく部屋を歩いた。
証拠は、藤堂を止める。
ただ、彼女は止まらない。
彼女が消えようとしている理由は、藤堂ではないからだ。
止められる言葉を、私は持っていない。
──持っている人なら、一人だけ、心当たりがある。