あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
決裁経緯。
配られた一枚目の稟議書の、決裁者の欄には、藤堂の名前が印字されている。
名指しは、資料のどこにもない。
それでも、要請の二点目は、まっすぐに一人の人間を指していた。
このみは記録を打ちながら、自分の心臓の音がキーの音に混ざっていないか、本気で心配になった。
沈黙を最初に破ったのは、藤堂だった。
「いやあ、驚いたねえ」
声は、いつも通り柔らかかった。
「適材適所を考えた措置ですよ。私は現場を大事にしたいだけだ。何か、誤解があるようですねえ」
綺麗な言葉は、綺麗なままだった。
ただ、拾う人が、誰もいなかった。
藤堂は資料を一枚めくって、それから、にこやかなまま続けた。
「しかしまあ、篠宮さん。そもそも、の話だがねえ。再建のお手伝いをお願いしている外部の方が、当社の決裁の中身にまで立ち入って調べ回る。これは……ご契約の範囲、なんですかねえ」
「ご指摘の通りです」
篠宮は、資料から目を上げた。
「本件の調査は、契約の範囲外です。ピースフェリー本社にも事前に照会し、議題化は承認しない、と回答を受けています。この報告は、私の独断です」
キーを打つ指が、完全に止まった。
(……独断)
独断ということは、つまり、この人は。