あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
「……気が変わったか」
「はい。すみませんでした」
「一週間って言ったろ。まだ四日だ」
封筒が、机の上に置かれる。
糊で封をしたときのまま、角だけ少し潰れていた。
「シュレッダーはあっちだ」
「持って帰ります。……戒めに」
「変なやつだな」
課長は封筒から目を上げて、このみの顔をもう一度見た。
「気が変わった理由は、聞かん」
「はい」
「……月曜より、ましな顔してるからな」
課長は椅子を回して、パソコンに戻った。
戻りながら、聞こえるか聞こえないかの声で言う。
「──上げる気は、最初からなかったけどな」
聞こえなかったことに、してあげた。
席に戻ると、スマホに千夏からのメッセージが二件並んでいた。
『ねえ、なんか篠宮さん笑ってたんだけど!?』
『何かあったでしょ』
うちの会社ってなんでこんなに情報が回るのが早いんだろう。
少しあきれながら、渡り廊下を通った。
月曜に避けた廊下だ。
外階段より三分近い、ただの通路。
十一月の終わりの夜で、窓の外はもう暗い。
初めてフルネームを呼ばれた場所と、悪手ですと言われた場所と、体温が触れた場所を、今日は普通の速さで歩けた。
鞄の内ポケットには、宛先のない封筒が入っている。
月曜より、鞄はずっと軽かった。