【恋愛×サスペンスホラー】イケメン年下後輩くんは、私の耳を溺愛する
彼の迷いのない運転で、私たちは山道を走っていく。
「だいぶ山の奥に来たけど大丈夫?」
「実は、こっちに別荘があって」
「別荘!?」
「山奥なら俺でも買える物件があるんですよ。日常を忘れて気晴らしするにはちょうどいいんですよね」
「へええ……」
バブル期の物件が安く出回っているという話があるから、そういうたぐいだろうか。
「いっそこっちに住もうかなって思うときもあります。仕事はリモートでできますから」
「そういう手段もあるのか」
「だけど唯楓さんが嫌ならこっちは別荘のままにしておきますよ」
結婚のこと言ってるんだ。
気が付いて、私はもじもじしてしまう。そんな私を見て、彼はふふっと笑った。
「今度正式なプロポーズするんで、返事を考えておいてくださいね」
「……うん」
どうしよう。つきあった二日後にプロポーズ予告されちゃった。
どぎまぎして、そこからはなにを話したのか、自分でもよくわからない。
小さな家の前に着くと、彼は車を止めた。
ふたりで降りて家を見る。
昭和の民家、というたたずまいだった。一階建てで手入れされていてこぎれいだ。とはいえ周囲には雑草も多い。当然ながらひとけはまったくない。
「ごめん。手入れが行き届かなくて。草の生命力がすごすぎてさ」
私は苦笑した。申し訳なさそうな彼もまたかわいい。
「俺の隠れ家へようこそ、お姫様。初めてのお客様です」
大仰にお辞儀する彼に、私はむずがゆさを感じながらも嬉しくなる。
「お邪魔します」と入ると、中も綺麗だった。