きみがすきなもの、ぼくがすきなもの。
第6話:すれ違う、それぞれの「普通」
11月の半ば。
いつもの月一デートの数日前、大学のキャンパスで、加奈は思わぬ場面に遭遇してしまった。
学食のテラス席で、貫太がサークルの友人たちと話しているのを見かけたのだ。
「いやー、貫太ってさ、ほんと男らしくてサバサバしてるよな」
友人の一人が、笑いながら貫太の肩を叩く。
その言葉に、貫太は少し困ったような、でもどこか愛想笑いのような表情を浮かべて、「そうか? まあ、普通だよ」と答えていた。
その姿を見た瞬間、加奈の胸にモヤモヤとした黒い影が落ちた。
(貫太くんは、あんなふうに男友達の前では「普通の男子」を演じているんだ……。私の前で見せてくれる、可愛いものが好きで、お菓子作りが得意な優しい表情は、私だけのものじゃないんだ)
ほんの小さな嫉妬だった。
けれど、その感情が自分の中に生まれたことに、加奈自身が戸惑ってしまった。
]私たちはただの「趣味の友達」の枠を出ているのだろうか。
それとも、お互いに踏み込みすぎてしまったのだろうか。
迎えた土曜日。
待ち合わせの古道具屋の前で、いつもなら満面の笑みで駆け寄ってくるはずの加奈が、どこかぎこちなく立っていた。
「……加奈ちゃん、久しぶり! どうかした? 顔色悪いよ」
貫太が心配そうに覗き込んできた。その優しさが、今の加奈には少しだけ痛かった。
「ううん、なんでもない……行こっか」
いつものように歩き出したものの、ふたりの間に流れる空気が、いつになくぎこちなく硬直していた。