先輩、好きになってください
放課後。

いつもの帰り道。

日向と綾花は、並んで歩いていた。

「ねえ、日向くん」

「はい?」

「覚えてる?」

「何をですか?」

「最初に話したとき」

「……もちろん」

日向が笑う。

「俺、先輩のこと好きになってくださいって言いましたよね」

「うん」

「まさか本当に好きになってくれるとは思わなかった」

「私も」

「え?」

綾花が笑う。

「本気で恋なんてするつもりじゃなかったから」

日向が少し驚いた顔をする。

「……でも」

綾花が繋いだ手を見る。

「今は、好きになってよかったって思ってる」

「……俺もです」

少しだけ沈黙。

「綾花ちゃん」

「ん?」

「これからも、ずっと一緒にいてください」

「……うん」

綾花が笑う。

「こちらこそ、よろしくね。日向くん」

夕暮れの帰り道。

二人は手を繋いで歩いていく。

本気で恋なんてするつもりじゃなかった。

ただ、少し話してみたかっただけ。

ただ、可愛い後輩だと思っていた。

なのに。

気づけば私は、

あの子のことを探していた。

「綾花ちゃん」

名前を呼ばれるたび、

胸が少しだけ温かくなる。

――恋なんて、するつもりじゃなかった。

でも。

この恋をしてよかった。


ーー完。
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