通りすがりの俺様
「水族館といえば、デートでしょう?」

 小野寺の言葉に、いずるは偏見がすぎる……と思いながら、そばを啜った。

「残念ながら、水族館好きの女友だちと行ったのよ。
 あ、でも、係員のおにいさんがイケメンだったわ。

 それでさ。
 売店でタコを売ってたのよ」

「えっ?
 水槽にいた奴をですか?」
と思わず、話に入ってしまう。

「……ぬいぐるみのよ。
 なんで水族館で生きたタコ売ってんのよ」
とこちらを向いた網代木が言った。

「でもそう……
 なんかなまめかしいタコだったのよ」

「え?
 色っぽいタコ?」
と矢端まで話に入る。

「えっ?
 いえ、違います」
と照れたように網代木は言って、

 ……私に答えるときと態度が違うじゃないですか、
という目でいずるに見られ、

 なんで、あんたが矢端さんに照れるのよ、
という目で小野寺に見られていた。

 だが、めげずに網代木は矢端に向かってしゃべっている。

「それが、生っぽいタコのぬいぐるみだったんですよ」

 どんなんだ、生っぽいぬいぐるみのタコ。
< 125 / 307 >

この作品をシェア

pagetop