通りすがりの俺様
「私、買いました、なまめかしいタコ。
 見てくださいっ」
とビニール袋からタコを取り出したが、ぎゃっ、と女子にあるまじき声を上げて、タコから手を離した。

 リアルすぎたからだろう。

「へえー、これがなまめかしいタコ。
 面白いね」
と落ちたタコを拾って、はい、と佐保子に渡していた。

「佐保子ちゃん、今度また呑みに行こうね」
「はいっ」

 いずるは、じっと矢端を観察しながら見ていたが――。

「……あなたは、矢端さんじゃないですよね?」

「いや、矢端だよ」

「矢端隆二(りゅうじ)さんじゃないですよね?」

「そうだよ」

 あっさり認めたっ。

 確かに、矢端さんですかとしか訊いてなかったし。

 この男は、矢端なにがしという名前なのだろう。

「双子なんですか?」

「いや、親戚だよ。
 うちの父親と隆二の父親が双子なの」

「あ~、なるほど」

「えっ? 矢端さん、矢端さんじゃないのっ?」
と驚く佐保子に、

「よく似た親戚の矢端さんだって」
といずるは説明する。

「嘘っ。
 私が好きなの、どっちっ?」

「どっちだろうね」
と矢端の従兄弟は楽しそうに笑っている。
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