通りすがりの俺様
「なんかじっと見てるうちに、可愛くならないかなと思って、あれからリビングに置いて、ずっと見てるんですが。
家族からは大不評です」
数日後、社食でそう言うと、一鷹が、
「お前んち、結構家族帰ってきてるじゃないか。
行きづらいな」
と文句を言う。
……前は一人暮らしは危ないだろみたいなこと言ってくれてませんでしたっけ?
「ちなみに兄は、リアル過ぎてたこ焼きが食べたくなると言っています」
……兄もいるのか、と一鷹は呟く。
ちょっと兄に怯えているようだった。
まあ、水内さんもなに考えてるのかわからない人だけど。
うちのおにいちゃんも得体が知れないもんな……。
「そういえば、矢端秀さんと連絡とりたいんですけどね」
「なんでだ?」
「矢端さんそっくりな秀さんなら、会社に入ることも可能ですよね。
私のロッカーを荒らしたのは、秀さんってことはないですか?」
そうだなあ、と考えている一鷹に、
「佐保子なら連絡先を知ってると思うんですが、言いづらいし。
矢端さんに訊いてみたんですが、はぐらかされましたし」
と言うと、
「じゃあ、俺がその佐保子とやらに訊いてみようか」
と言い出す。
「え、いいです」
「なんでだ」
佐保子に水内さんが秀さんの連絡先教えてくれって言ったら、佐保子、じゃあ、代わりに水内さんの連絡先教えてくださいっ、とか言いそうだなと思ったからだった。
……いや、教えても別に私には関係ないはずだよね。
なんかもやっとするけど。
まあ、普段の佐保子だったら、ガンガン行くだろうけど。
今は秀さんに夢中なようだから、そんなこと言わないか、
と結局、一鷹の申し出を了承した。