通りすがりの俺様
社食を出てから、廊下で佐保子に話しかける一鷹を見ていた。
「いいですよ。
秀さんに用事があるんですね。
矢端さんに訊けばいいのに」
と佐保子は笑っている。
その矢端さんが教えてくれないからだよ、と思いながら、物陰から覗っていると、佐保子は言った。
「あっ、じゃあ、お返しに水内さんの連絡先教えてくださいっ」
やっぱり、そう来るかーっ。
秀さんはどうしたっ!?
いやいや、待て。
もしかしたら、水内さんをコンパのとき、女子を集める餌にしようとしているのだけなのかもっ。
いや、それもどうなんだっ?
と密かに手に汗握っていると、いつの間にか晴菜が背後にいて、一緒に二人の様子を眺めていた。
晴菜は、
「よし、私は佐保子から、水内さんの連絡先強奪しよう」
と笑っている。
やめて~と思ったが、自分がやめてと言うのも変だなと思う。
ちなみに、晴菜の方は笑っていて、自分をからかっているだけのようだったが。
佐保子は本気だった。
あの押せ押せゴーゴーなところは見習いたい、と思っていると、一鷹が言った。
「いや、駄目だ。
俺の連絡先は、鳴沢にしか教えないから」
横を通った一鷹の上司が、
「いや、取引先には教えろ」
と通りがかりに突っ込んでいたが……。
でも、鳴沢にしか教えないとか。
そんなこと改めて言われたら、ちょっとドキリとしてしまうではないですか。
そういずるは思っていた。