通りすがりの俺様



「財産目当てじゃない証明か」
と呟いた一鷹は、よし、と手を打った。

「俺をお前の好きにしていいぞ!」
と長い腕を広げていってくる。

 さあっ、何処からでも来いっ、という感じだった。

「……わかりました。
 じゃあ、雨戸の建て付けが悪いので、直してください」

 よしきたっ、と一鷹は早速雨戸を見に行っている。

 その広い背中を眺めながら、ちょっと悪かったかなといずるは思ったが、一鷹は機嫌良く、雨戸を引っ張り出していた。

「これを直したら結婚してくれるんだよな」
と言う。

 ――違うよっ!?

 そのとき、後ろ側の雨戸を動かす音がした。

 一鷹が慌てて言う。

「矢端!
 なに先に直そうとしてるんだっ」

「これ直したら、結婚できるんだよね?」

 ……しませんよ。

 矢端はいずると一鷹を見て脅すように言う。

「でも、僕が直さないと、秀が来て直すよ」

「……どうなってんだ、お前らは」
と文句を言いながら、二人が直しているのだが――。

 今、気づいたのだが、窓もカーテンも全開で直している。

 犯人から丸見えだ……。
< 173 / 307 >

この作品をシェア

pagetop