通りすがりの俺様
 


「なんか急に話が進みすぎてついていけてないんですよ」

 いずるは矢端に熱燗を注いでもらいながら言った。

「でも、もう式場も押さえたしな」
と一鷹が横から言ってくる。

 ……だから何故、あなたはそうグイグイ物事を進めるのですか。

 それが楽なときもあるのだろうが。
 結婚とかいう重大事だと笑えない。

「他の式場を押さえたい人に譲るとか」
「だが、お前、ドレスも押さえてるぞ」

 そうだった。
 あのドレスは着たい。

「花嫁はかえられないなら、花婿をかえればいいんじゃないの?」
と言う秀を、いや、なんでだっ、と一鷹が振り向く。

 はいはいはいっ、と秀が手を挙げた。

「僕がそこに収まってもいいよ。

 なにもかももうそろってるの、タイパいいじゃん。
 花嫁までそろってるんだよ」

 タイパで手に入れられようとしている……。

「大丈夫。
 式場代もドレス代も僕が払うよ。
 金ならあるから」

 言ってみたいです、そのセリフ。

 あの土地、換金する気はないので、私はたぶん、一生平民(?)だ。

 そんな話をすると、一鷹が言う。

「いずるも金ならあるだろう。
 俺の妻になるんだから」

「……水内さんちの財産が水内さんに入るとは限らないじゃないですか」

「……なに急に恐ろしいこと言ってんだ」
と言われるが。

 いや、今まさに、財産を巡る闘争に巻き込まれているからだ。
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