通りすがりの俺様
 


「今日は大変な騒動だったな」

 珍しく台所に立っている一鷹が言う。

「でもなんか、矢端さんが『二年くらい前に、十歳の子を連れて来られた』ことしか記憶に残らなかったんですけど。

 っていうか、そういうの、秀さんの方かと思ってたんですけど」
といずるは言って、

「ちょっと……」
「いずるちゃん……」
と二人に言われる。

 あのあと、
「普段の料理している秀さんも格好いいのに」
と言ったいずるの言葉を聞きとがめた一鷹が、

「俺だって料理くらいできるぞ」
と張り合いはじめ、そこに、

「魚をさばける男が格好いい」
と矢端が言い出し、何故か、みんなで魚のさばき方を習うことになったのだ。

 一鷹は秀に、白とグレーのストライプのエプロンを借りてキッチンに立ち、
「……親にこの姿は見せられない」
と言っていた。

「お母様は男子厨房に入るべからずな方なんですか?」
といずるが言うと、

「いや、あの人は自分も入らない」
と言ってきた。

 ……なんか怖い、水内家といずるは思う。
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