通りすがりの俺様



「俺も魚をさばけるようになった。
 上級者だな」

 なんの上級者なのかわからないが、木陰に白いソファのある中庭で一鷹は言う。

「魚、お好きなんですか?」

「この正月はタラにハマってた。
 タラの化身かってくらいタラを食ったな」

 ……化身がタラを食べたら共食いなのでは。

「それにしても、お兄さんは大丈夫か」

 悪い女に騙されかけているようだが、と一鷹は言う。

「はあ、もともと気の多い人なので、可愛くて人の良さそうな女性をあてがえば、すぐにそっちを向くと思います。

 ……それに、その女性。
 ほんとうにただ、おにいちゃんの家族のことを知りたかっただけなのかもしれないですしね」

「いや、お前のことばかり訊くのおかしいだろ」

 しかし、お兄さんが騙されやすいのは問題だな、と言ったあとで、一鷹は唐突にこちらを振り返って言う。

「俺はお前になら騙されてもいい」

 と、突然、なにを言っているのですか!

 そもそも、私、騙せるほどの経験値もありませんよっ、
と思いながらも、いずるは赤くなる。
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